研究活動

平成24年度

大規模パラメトリックスタディによるマイクロデバイスの設計パラメータ探査

マイクロデバイスを流体機器のどの位置に,どのような配置で取り付け,どのように作動させれば最もうまく流体を制御できるのかを,大規模なパラメトリックスタディを用いて調べることで,マイクロデバイス設計の際に有用となる知識基盤を構築しました.
下の図は様々な翼型周りの流れを,マイクロデバイスによって制御している様子を示しています.一つ一つの図はマイクロデバイスの位置や作動方法が異なるそれぞれの条件下における流れ場です.マイクロデバイスの設計パラメータの違いによって流れ場の様相は大きく異なっており,うまく制御ができている条件がある一方,制御がうまくいかない条件も存在しています.これら多くの条件の結果を比較することで,より高い制御効果を実現するためのマイクロデバイスの設計指針を得ました.
このような様々な設計変数を有する大規模なパラメトリックスタディは,「京」に代表される超高性能なスーパーコンピュータを用いることで初めて実現可能となるものです.本計算は流体機器の実設計における数値シミュレーションの有用性を示しています.

研究活動図1
図 大規模パラメトリックスタディから得られた各ケースにおける流れ場(上図)と用いた翼型(下図)

流体制御メカニズムの解明

マイクロデバイスによる流体制御メカニズムを解明するために,上記のパラメトリックスタディから得られた流れ場を詳細に調べました.
下の図は翼前縁付近における流れの特徴的な様子を一つにまとめて示したものです.このように,流体制御によって生じる現象を様々な側面からみることで,流体制御に鍵となる重要な流体現象を理解することができます.

研究活動図2
図 翼前縁付近における剥離制御流れ



下の図は制御効果に強く影響する物理量の時間平均分布と,流れの瞬間場を示しています.上下2つの図はマイクロデバイスの作動方法が異なる条件の結果をそれぞれ示しており,作動方法によって分布が大きく違っていることがわかります.このような比較を様々な物理量や手法を用いて行うことで,制御性能を向上させるために促進(抑制)すべき流体現象を知ることができます.
これら,マイクロデバイスによる流体制御メカニズムに関する知見を基に,今後はより高効率な流体機器の設計を進めていきます.

研究活動3
図 マイクロデバイスの作動方法が流体現象に与える影響

実問題への適用

実用流体機器の制御による性能向上の可能性を示すため,回転機器や,翼列周りの流れのシミュレーションにも取り組んでいます.

研究活動4
図 回転翼周りの流体制御


今回明らかになった制御機構の知見を利用して,今後はより多様な動作環境に対応するため,システム制御則に基づく制御設計を施した実用流体機器のシミュレーションを行うことを検討しています.