SMAPとは?


本ソフトウエアは,感圧塗料計測取得画像に関するさまざまな画像処理を行うソフトウェアです. マーカー検出などの大部分の処理は自動化されており、GUIベースで作られているため 短時間で取得画像の一連の後処理を行うことが可能です.


図1 SMAPのウィンドウの例


SMAPによる画像処理の簡単な流れ

@ダーク補正 (Dark Calibration)
光が当たらなくても存在する輝度情報を除去する補正処理です.

A平均化 (Averaging)
通風中に取得した複数枚の画像を平均化することで画像からショットノイズ等のノイズを除去する処理です.

Bスムージング処理 (Smoothing)
数値演算処理を用いて画像からノイズを除去する処理です. SMAPには,Cell Average, Median, Selection, Compact, Wavelet の5種類のフィルターがあります. Cell Average は拡散的な効果がありノイズは除去されやすいですが,衝撃波のようなシャープな波面も鈍りやすい傾向があります. Median, Selection はシャープな波面が鈍りにくくショットノイズの除去に有効なフィルタとして,しばしば用いられます. Wavelet はノイズ除去の効果と共に,最大誤差が増加する傾向が小さく,ノイズ除去に対して最も効果的です.

C2値化処理 (Binary Conversion)
風洞実験では,通風時に模型の位置が基準位置から移動します. 感圧塗料(PSP)計測から得られた画像から圧力画像を算出する過程において,通風画像を基準画像で割算する必要があるため, 通風による模型の移動量を正確に見積もることは重要です. そのために通常は模型上にマジックなどで黒色のマーカー点を設置し,通風画像と基準画像を使ってそれぞれのマーカー点位置を対応付けることにより模型の移動量を見積もります. マーカー点を打った位置では塗料の発光が起きないため,2値化することによりマーカー点位置を検出することができます. なお,位置補正が必要ない場合は,CからEの処理は行わず,F割算へ進んでください.

Dマーカー点検出 (Manual/Automatic Marker Detection, Unsharp Mask for Edge Detection)
(1)マーカー点の位置をユーザー自らマウスを使って指定する手動選択
(2)PC側で2値化画像からマーカー点の位置を自動的に検出してくれる自動検出
(3)模型の特徴点をマーカー点として位置補正に利用するエッジ検出
の3種類があります.エッジ検出は他の手法と組み合わせることにより利用します.

E位置補正 (Image Registration)
マーカー点検出から取得したマーカー点の位置情報を利用してアフィン変換を行うことにより行います.

F割算 (Division)
一般に感圧及び感温塗料計測では,以下に示す発光強度比Iref/Iと圧力比P/Pref及び温度比T/Trefの関係が成り立ちます.I は塗料から発光される光の強度,Pは圧力,Tは温度,添え字refは無風時の基準状態を表し, aκ, bκは発光強度比と圧力比及び温度比との関係を表す係数であり,別途塗料の較正実験を行うことにより求めます. 無風時と通風時の割算画像によりIref/Iの値を求め,較正実験によって必要な係数を求めれば,圧力P及び温度Tが得られることが分かります.
 感圧塗料(PSP):
 感温塗料(TSP):
この処理では基準画像を通風画像で割ることによりIref/Iを求めます.

G温度算出,温度補正 (Calibration, Temperature Calibration)
較正実験により感温塗料(TSP)の特性を調べ,Bk の値を求めることにより感温塗料の割算画像から温度算出を行います.(A Priori法を用いています) また,この温度情報を利用して感圧塗料の温度依存性を除去するための温度較正を行います.

H圧力算出 (Calibration)
温度較正された発光強度比Iref/I に較正係数をかけることにより圧力算出を行います. 較正係数を求める方法は2種類あります.
(1) A Priori法…別途,較正試験を行い,そのサンプルから求めた係数を使用する方法.圧力孔のデータは必要ありません.
(2) In Situ法…実験中に圧力孔データを取得し,周辺の感圧塗料の発光強度との対比から較正係数を算出する方法.
この処理により模型表面の表面圧力分布を得ることが出来ます。

I3次元マッピング (3D Mapping)
さらに、模型の形状データを用意すれば,@〜Hで得られた圧力画像を模型表面座標にマッピングすることができます. 得られた模型上の表面圧力分布を積分することで高価な天秤を使わずに空気力を算出することができます. 現バージョンではマッピングまでしか対応しておりませんが、将来的には空気力算出までSMAPでできるようにする予定です.


図2 SMAPによる画像処理の流れ