公開ソフトウェア

① パレート解解析支援ツール「ADVICE」
(ADvanced VIsualization tool based on geodesic distanCE)

ADVICEでは,パレート解集合の持つ評価値情報と設計変数情報を共に考慮したパレート解の可視化を行うことができます.評価値空間における近傍関係と設計変数空間における距離関係,あるいはその逆を,合わせて可視化することで,一方の空間からだけでは見られない,両空間の関係性が視覚的に把握できることをねらいとしています. このツールでは,多変量解析の分野で注目を集めている“Isomap”という手法に注目し,そこで用いられる“測地距離”の概念を応用しています.評価値空間上でデータの近傍関係を定義し,その情報を使って算出される設計変数空間上での測地距離,もしくは逆に設計変数空間上でデータの近傍関係を定義し,その情報を使って算出される評価値空間上での測地距離に基づき,データ間の距離関係の可視化を行います.このツールを用いてパレート解の可視化を行うことで,例えば図1のように,データの分布における分岐構造など,視覚的にデータの特徴を見つけることができるため,これら注目すべき特徴を持ったデータ(パレート解)を抽出し,解析することなどができます.
パレート解集合の可視化
図1 パレート解集合の可視化

可視化を行うアルゴリズムは以下のようになっています.ここでは,評価値空間上でデータの近傍関係を定義し,設計変数空間上で測地距離を求める場合について説明します.

  1. 近傍関係を定める空間を選択し(ここでは評価値空間),その空間における近傍半径εの大きさを定義する.
  2. その空間において,距離がε以内に存在するデータ間にリンクを結ぶ.
  3. もう一方の空間(設計変数空間)において,2.で求めたリンク情報を使って測地距離を求める*.
  4. 算出された測地距離に対し,多次元尺度構成法(MDS)を適用して可視化を行う.
*例えば図2において, d12’=d12,d14’=d12+d24(最短となるリンクルート),d56’≒∞となる.ただし,d12’はデータ1とデータ2の測地距離,d12はデータ1とデータ2の設計変数空間におけるユークリッド距離を表す.

可視化の流れ
図2 可視化の流れ

ADVICEに関する文献
工藤文也,吉川大弘,古橋武,“ハイブリッドロケットエンジンの概念設計最適化問題におけるパレート解の解析に関する一考察”,人工知能学会論文誌,27 巻, 2 号, pp.46-51, 2012
F. Kudo, T. Yoshikawa, “Knowledge Extraction in Multi-objective Optimization Problem based on Visualization of Pareto Solutions”, 2012 IEEE Congress on Evolutionary Computation (IEEE CEC 2012), pp.860-865, 2012

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